フラパン家は1270年、コニャック中心部からほど近い町・ズコンザックのフォンピノ城を
拠点に酒造業をはじめました。700年を越える歴史はなんと全世界で5番目の長さです。
創業当初はワインの製造を手がけていましたが後にブランデー製造に転向し、
その伝統は現在20代目まで受け継がれています。

フラパン家はコニャックきっての名家で、
フランス国王ルイ14世の時代にはピエール・フラパンが王の薬師を務めています。
1697年にルイ14世より紋章を授かっており、最近まではその紋章がボトルに使用されていました。

1885年には当時の経営者ピエール・フラパンにより会社として創設されました。
ピエールの娘マリーとレミーマルタンの後継者アンドレ・ルノーが結婚し、
後にマリーが会社の権利を相続したことによりフラパンの原酒はレミーマルタンに卸されることになります。
これによりフラパンは自社ブランドでの販売をやめてしまい、長い間忘れ去られたブランドとなっていました。

しかしマリーの娘の一人がリキュールで有名なコアントロー家に嫁ぎ、
80年台にコアントロー社がフラパンのブランドを受け継いだことでその名は復活し
今日では、その品質の高さで強い支持を集めるコニャックメーカーの地位を再び手にしました。
現在はコニャックメーカーのシャトー・ポーレやシャンパンハウスのゴッセとともに、
ルノー・コアントローグループの傘下にあります。

フラパンはブドウの栽培から瓶詰めまで、コニャック造りの全工程を自社で担う「プロプリエテール」
のメーカーです。プロプリエテール・コニャックのメーカーは今日では10社ほどしか存在せず、
多くが小規模の家族経営ですがフラパンは世界75カ国以上に輸出され、フランス国内で販売される
コニャックの約10%を占めているというから驚きです。

その製造工程では、コニャック造りの評判を確立した当時から殆ど変わらぬ製法を守り続けてきました。
フラパンはコニャック地域でも最上級とされる土壌をもつグランド・シャンパーニュ地区に
300ヘクタールを超える広大なブドウ畑を所有し、自社製品全ての原材料を賄っています。
剪定した枝やブドウ果汁の搾りかすなど自然の資源を肥料として利用し、
植え替えの際は土壌の再生と病害予防のために最低7年の休耕期間を設けるなど
土作りを大切にした伝統的な農法でブドウ作りを行っています。

手積みで収穫されたブドウは新鮮なうちに圧搾・発酵された後、
伝統的なシャラント式の蒸留器で蒸留されます。
その後樽詰めされた酒は個々の特性に合わせて地下やロフトなど環境の異なる貯蔵庫へ貯蔵されます。
長い熟成期間中も庫内の大気状況の変化に合わせて熟成場所の配置変更を行うなど、常に原酒の
状態と周囲の環境に細かく気を配りながら熟成されます。
セラーの環境と原酒の育ち方を熟知しているからこその技といえるでしょう。
ちなみに熟成期間の4分の1は新樽、残りの期間は古樽を使用し樽香を調節しています。

こうして最後まで、古くから変わらぬポリシーを持って造られたコニャックは
グランドシャンパーニュらしい華やかで繊細な味わいに定評があります。
全ての工程において一貫した信念を守り続けてきたことが
今日でもプロプリエテールのメーカーであり続ける秘訣ともいえます。

フラパン家は多くの名士たちを輩出してきた家系ですが、
その中でも特に有名なのが16世紀に活躍したフランス・ルネサンスを代表する人文主義作家・医師のフランソワ・ラブレーです。
フラパン家の娘キャサリン・フラパンを母に持つラブレー。
その代表作、長編小説「ガルガンチュアとパンタグリュエル」は
ルネサンス文学を語る上で欠かすことの出来ない存在です。

生誕500周年を記念した「フランソワ・ラブレー500thアニバーサリー バカラボトル」、
細緻な金細工を施した懐中時計型のボトルにフィロキセラ禍以前の貴重なコニャックを詰めた
「キュヴェ・ラブレー ポケットウォッチ」、
水差し型の「フラパン キュヴェ　ラブレー プルミエ・エディション クリスタルカラフェ」
などラブレーをモチーフにした高級商品も数多く発売されており、
彼の存在はフラパン家の大きな誇りであることが伺えます。

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